プレゼント
保育園に通うようになってから、たくさんのお友達が出来た。
ヒカルくんと仲良しのあかりちゃんでしょ、
ぶっきらぼうだけど一緒に遊んでくれるゆうきくん、
あんまりお話が好きじゃないみたいだけど、絵本を貸してくれたこうすけくん、
あかりちゃんと仲良しで元気いっぱいのあすみちゃん、
すごくのんびり話しかけてくれたゆうたくん。
それから、ひとつ年上のお部屋にいるお友達も出来た。
ボクが意地悪されてた時に助けてくれたてつおくん。
保育園のガキだいしょーだから、とっても頼りになるよってヒカルくんが言ってた。
それから、その鉄男くんのお友達のきみひろくん。とっても優しかった。
それからヒカルくんの仲良しのよしたかくん。いつも一緒に遊ぶんだって。たくさんお友達が出来たってお母さんに言ったら嬉しそうに笑って
「よかったわね」
って言ってくれた。
お父さんにヒカルくんが碁を見てみたいって言ってたって教えてあげたら
今度おうちに遊びに来てもらいなさいって。
緒方さんと芦原さんに保育園のことを話したら、にこにこ笑ってくれた。
芦原さんはボクと遊べなくなって寂しいな〜って言ってた。
ボクも芦原さんと緒方さんと遊べなくて寂しいから、一緒に保育園行こうって誘ってあげたら笑われた。
もう二度と誘ってあげないからねっ。
今日も保育園に行く。
初めの頃は保育園に行くのはすごく嫌だったけど、今は違う。
今はすごく楽しくて、ボクはいっつも一番乗りをするんだ。
今日も一番に来たと思ったら、ヒカルくんがお部屋で一生懸命に何かをしていた。
「ヒカルくん?」
「わっ?!」
ボクが声をかけると、ヒカルくんは飛び上がって驚いてすぐに振り向いた。
「アキラくん、おはよう」
いつもの笑顔で挨拶をされる。だからボクも笑って返事をするんだ。
「おはよう、ヒカルくん。今日はヒカルくんがいちばんだね、どうしたの?」
「ううんっ」
ボクがヒカルくんに近づいていくと、ヒカルくんは机にあった何かを素早く隠した。
「なあに?」
「なんでもないよっ」
ヒカルくんは慌てて首を振る。
内緒にされて、なんだか嫌な気分になった。
でも、すぐにヒカルくんが「お外で遊ぼうっ」とボクの手を引いてお外に飛び出してしまったから、ヒカルくんが何をしていたのか見ることは出来なかった。
その次の日も、そのまた次の日も、
ヒカルくんはボクより早く保育園に来てた。
「どうして早いの?」って聞いても笑って首を振るだけ。
ボクはヒカルくんの笑顔が大好きだけど、あんな風に慌てて笑ったのは嫌い。
楽しそうじゃないヒカルくんの笑顔はキライ。
ヒカルくんはボクのキライな笑顔を作った後すぐに「何か」を隠す。
その後はいつものボクの好きな笑顔になるから、いっつも聞けなくなっちゃうんだ。
どうして、隠しちゃうのかな。
ボクのこと、キライになっちゃったのかな…。今日もお外で遊ぶ時間がやってきた。
ゆうきくんが「はやく行こう」って急かす。
ボクがヒカルくんに行こうって言ったら、ヒカルくんは首を振った。
「オレ、今日は疲れちゃったからお部屋にいる」
確かに今日の朝、一緒に遊んだけど、ボクは疲れてないし、いつもと同じくらいしか遊んでない。
「じゃあボクもお部屋にいる」
そう言ったら、ヒカルくんがびっくりした目をして首を振った。
「いいから、アキラくんは行っておいでよ」
ヒカルくんが少し笑ってボクの背中を押す。ボクのキライな笑顔で。
どうしてそんな顔するの?
ボクと一緒にいるの、いやなの?
そう聞きたかったけれど、聞けなかった。
ゆうきくんが「ヒカルなんかほっといて行こうぜ」ってボクを引っ張った。
ボクがお部屋を振り返ると、ヒカルくんが机で何かを始めた。
いつも絵本を読んでいるこうすけくんがヒカルくんのしていることを覗き込んで、何かを話してた。
ヒカルくんは嬉しそうに笑ってた。砂場に行くと、ゆうきくんはしゃがみこんで、砂の山を作ろうかってボクを見上げた。
「そんな顔すんなっ、アキラは男の子だろっ」
ゆうきくんがボクを睨んで言った。
「そんな顔って?」
「女みたいな顔のことっ」
「そんなこと言ってもボクは生まれた時からこの顔だよ」
「違うっ」
「何が?」
ゆうきくんは呆れた顔をして「いいからすわれ」って言う。
ボクが座るとゆうきくんはあれこれ言いながら砂をお山にしていく。
すると、サッカーボールが飛んできて、お山にぶつかった。
お山はぐちゃぐちゃになってしまった。
ゆうきくんは驚いてるみたいで、目をまん丸にしてた。ボールは砂場のはじっこの方で止まった。
「わりぃ、だいじょーぶか?」
駆けてきたのはてつおくんだった。その後ろからきみひろくんが走ってきた。
「だいじょーぶなもんかっ」
ゆうきくんが立ち上がって、てつおくんに駆け寄った。
「オレの作った山がつぶれちゃっただろっ」
そう言ってゆうきくんはてつおくんを睨んだけど、その目には涙が溢れそうだった。
てつおくんは壊れた山を見て言った。
「こんなんじゃ壊れるに決まってるだろ」
ゆうきくんはてつおくんを睨んだまま、涙を零した。
「泣くなよ。おれ様が作り直してやる!しかもちょう特大のじょーぶなのをなっ」
てつおくんはそう言うと、その辺にあったバケツを拾い上げてきみひろくんに渡した。
「水くんでこい」
「なんで?」
「いいから」
「わかった」
きみひろくんはバケツを受け取って水のことろまで走っていった。
「ほら、ゆうき!このさらさらの砂を集めるんだよ」
ゆうきくんは涙を拭いながら、てつおくんと砂を集めだした。
「アキラはやらねーの?」
てつおくんがボクを見て言った。
「…ボク、お部屋にいる」
てつおくんは「そうか」って言って、砂集めを再開した。
ゆうきくんは砂を集めるのに一生懸命で、もう泣いてなかった。
ボクがお部屋に帰ろうとしたら、あかりちゃんが声をかけてきた。
「アキラくん、ヒカルは?」
「お部屋」
「…ふうん。ねぇ、一緒におままごとしない?」
あかりちゃんはお砂で出来たお団子と葉っぱをお皿に入れていた。あすみちゃんも一緒だ。
「しない」
ボクはあかりちゃんたちに手を振ってお部屋に向かった。
ボクがお部屋に戻って、ドアを開けようとしたら、先にドアが開いてビックリした。
ドアを開けたのはヒカルくんだった。
「うわっ」
ヒカルくんはすっごく驚いてた。
「ヒカルくん、どこいくの?お外で遊ぶの?」
「ううん。さい先生のことにいくの。アキラくんは?もう遊ばないの?」
ボクが首を縦に振ると、ヒカルくんはにっこりと笑って「じゃあ後で一緒にお絵かきしよう」って言ってくれた。
ボクは嬉しくって、「うん」って笑ってヒカルくんに手を振った。
ボクがお部屋でヒカルくんを待とうとお部屋に入ると、こうすけくんが絵本を読んでいた。
ボクは、さっきヒカルくんがいつも隠すものをこうすけくんが見ていたのを思い出した。
「ねぇ、こうすけくん。ヒカルくん、さっき何してた?」
こうすけくんは絵本から顔を上げると、ボクをじっと見て、ふいっと絵本に視線を戻した。
「僕は知らないよ。ヒカルくんに聞けば?」
「何でっ、だって、さっきヒカルくんとお話してたでしょ?!」
「忘れちゃったよ。うるさくするなら出ていってね。僕、絵本読みたいんだから」
ボクは泣きそうになった。
何で教えてくれないの?みんな、ボクのこと仲間はずれにするんだ。
ボクは泣かないように頑張って、お外に出た。ボクは走って園のすみっこにある木があるところ、ヒカルくんの名前を聞いた時の木のところにいった。
泣きそうになるのをがまんして、ボクはしゃがみこんだ。
すると、ヒカルくんがボクが初めてここに来た時みたいに駆けてきた。
でも今度はちっとも嬉しくなかった。
「アキラくんっ」
「………」
「どうしたの?お絵かきしないの?お外で遊ぶ方がいいの?」
「ヒカルくんと遊ばない」
そう言ったらヒカルくんは少し悲しそうな顔をした。
ボクは顔を背けた。
「…なんで?」
「遊びたくない」
「…じゃあ、ご本読む?」
「ヒカルくん、あっち行ってよ。ボク、ヒカルくんといたくないんだ」
ぷいとボクはヒカルくんに背中を向けた。
ヒカルくんは何も言わない。後ろで足音が聞こえた。どこかに行っちゃったみたいだった。
ボクがおそるおそる後ろを見ると、ヒカルくんはやっぱりいなかった。
ボクはまた泣きそうになったけど、がまんしてまたしゃがみこんだ。しゃがみこんで絵を描いてみた。
おひさまの絵。
それをじっと見ていたら、先生がいるのに気がつかなかった。
「アキラくん?」
ボクが顔をあげると、さい先生が立っていた。
その後ろにヒカルくんが立っていた。ヒカルくんは顔をぐしゃぐしゃにして泣いてた。
「ヒカルくんとケンカしたんですか?」
ヒカルくんは「ひっ、ひっ」と声を漏らすだけで喋らなかった。
「………」
「アキラくん?ヒカルくんがね、私のところに来て泣くんですよ。『アキラくんに嫌われちゃった』って。何かあったんですか?ふたりはとっても仲良しだったのにケンカするなんて」
違うもん。ケンカじゃないもん。
それに
「ほら、ヒカルくん。アキラくんとちゃんとお話して?アキラくんがヒカルくんを嫌いになるわけないじゃないですか」
先生はそう言って、ヒカルくんをボクの方に行くように促した。
「ねぇ、アキラくん」
先生はにっこりと笑う。
ボクが頷くと、先生は嬉しそうにヒカルくんに話しかける。
「ほら、ヒカルくん、アキラくんは違うって言ってますよ?」
ヒカルくんは泣き顔でボクをじっと見て首を振り、ふにゃぁっと泣き出した。
どうして泣くの?
どうして、ヒカルくんが泣くの…?
「ヒカルくん、どうしたんですか。嫌いなんて言ってないじゃないですか」
先生がヒカルくんを慰めても、ヒカルくんは首を振って泣くだけだった。
「違うもん」
ずっとがまんしてたけど、どうしても止められなくって、
ボクの目から涙が零れた。
「違うもん」
「アキラくん…?何が違うんですか?」
「ボクじゃないもん。ヒカルくんが、ヒカルくんがボクを嫌いなんだもん」
そう言ったら、すごく悲しくなって、もっと涙が出てきた。
ひくひくと息がつまってきた。
涙で先生の顔がよく見えなかった。きっと困った顔をしてるんだと思う。
「そんなことないですよ。アキラくんもヒカルくんも何を言っているんですか…」
「だ、て…っ」
声がきちんと出なくて話にくかった。
「ヒカぅっ、ん、内緒に、するもっ。こうすけ、くっん、知って、るの、にっ。キラ、だからっ、内緒、っするんっ」
涙が止まらないし、うまく話せなくて悲しかった。
もう先生もヒカルくんも見えなかった。
涙を拭いても拭いても止まらない。
「きょ、も、一緒に、あそ、でくれなっ、し。ヒカルくんがっ、ボクのことっ、嫌いなっ、だ!」
どうして内緒にするの?
ボクが、何かしたのかな。
嫌いにならないで…
「あっ、ヒカルくんっ?!」
小さな足音が遠ざかっていった。見たら、ヒカルくんが走ってお部屋に行ってしまった。
ヒカルくんがいなくなって、ボクは怖くなった。
「せ、せぇ。ヒカルくん、がっ、ボクを嫌いなのっ。いやだぁ。ボクっ、ヒカルく、好きなのにっ、うっ、」
先生はボクの背中をよしよしとさすってくれた。
でも涙は止まらなくって。
「ヒカ、くんっ、行っちゃったっ。やだぁ…っ」
行っちゃやだよぉ。
「アキラくんっ」
ヒカルくんの声が聞こえた。
目をこすってから見てみると、ヒカルくんが丸められてリボンでとめられている画用紙を差し出してた。
「な…ぁに?」
「これ、あげる」
ボクがひっくひっく言いながらそれを受け取った。
「オレ、アキラくんに内緒でこれ書いてたんだ。びっくりさせたくって」
そのリボンをほどいて、画用紙を広げた。
「前に碁石見せてくれたから、お礼にあげようと思ったんだ。内緒にしてて、ごめんね」
画用紙いっぱいに絵が描かれてた。
ボクと、ヒカルくんと、いっぱいのお友達の絵だった。
木と、ボクの大好きなおひさまもあった。
「これ…?」
ボクがヒカルくんを見ると、恥ずかしそうに笑いながら説明してくれた。
「あのな、これがアキラくんで、これがオレで、これがゆうき、こっちがあかりで、これがよしたかだろ」
「くれるの?」
聞いたら、ヒカルくんがボクの大好きな笑顔で「うん」と笑ってくれた。
ボクの涙は驚きすぎて止まってた。
「ありがとう」
お礼を言うと、ヒカルくんは嬉しそうに笑った。
「ほら、だーれも嫌いなんて言ってないでしょう」
さい先生が嬉しそうに笑ってボクたちの頭をなでてくれた。
「じゃあ、何して遊びますか?」
さい先生がボクたちに聞いてきた。
ボクたちは顔を見合わせて、「何にする?」と相談した。
決まったのは「砂遊び」で、砂場に行ったら、まだてつおくんとゆうきくんときみひろくんがお山を作ってた。
「おう、ヒカル!おまえも手伝え!アキラもっ!」
てつおくんが手招きしたのでボクらは駆けていく。
「先生もやる?」
てつおくんが突っ立っているだけのさい先生を見上げて言う。
「はいv混ぜて下さいvvv」
帰る直前、ヒカルくんがいいことを教えてくれた。
あの、くれた絵のボクは碁石を持っていたんだ。
小さくってわからなかったけれど、確かに丸い黒いものが書かれていた。
帰ってから、緒方さんと芦原さんがボクの部屋にやってきて、ボクの顔を覗き込んだ。
そしてふたりしてひそひそとおしゃべりをした。
ボクは「何?」と聞いた。
ふたりして首を横に振ってなんでもないと言う。
ボクがむっとしてたら、ふたりが久しぶりに遊ぼうかって言ってくれたので遊んだ。ボクは大きくなるまで知らなかった。
保育園の先生はボクが園で何をしていたか全部お母さんに教えているなんて。
今日のことも、お母さんから緒方さんや芦原さんに伝わってたみたい。
でも知らなくてよかった。
知ってたらまた泣きたくなったかもしれない。
もう泣くのは嫌だ。ケンカもしない。
ずっと仲良しでいることにするんだ。
だから、緒方さんと芦原さんがひそひそしてても許してあげるね。
保育園の先生は生徒が一日どう過ごしたとか細かくカードに書いて親に渡してる
っていう保育園をテレビで見たことがあるのでそれを参考に。
いくら小さくてもアキラは滅多に泣かないと思う(というか、そうあって欲しい)
園児は思い切り泣かせられるから楽しいなぁ(おい)
今回はいろんなキャラを出せて嬉しかった。
しかし名瀬ちゃんとフクは名前だけかい。くあ〜、次こそ出したい。
あ、下の名前わからない方いらっしゃるのかしら…?いらしたら、…勘で納得して下さい(無理)