「はぁ〜〜〜…、つっかれたぁ…」
明かりのつけていない玄関に迎えられて、俺は真夜中に帰ってきた。
よりにもよって、今日は俺の誕生日。
んでもって、自分の誕生日にイベントに行かなければならない寂しさ。
っつってもイベントの中でどっきりで祝われたのは嬉しかった。
俺にとっては知らない赤の他人だけど、プレゼントだと嬉しそうに渡されると、幸せだなぁと感じる。
唯一寂しいのは、恋人がいないこと。
恋人の存在はいるよ?でもアイツも仕事。しかも地方と来たもんだ。
俺らの恋路は険しく厳しい…;
本当は会えないっていうのも覚悟してた。
搭矢も俺も忙しい時期だって、わかってる。
でも電話くらい、許されてもいいかなと思ってた。
でもなんとなく、電話しにくい時間になってしまった。
アイツはもう寝てるかもしれねぇ。
もう12時になる。
俺の誕生日が終わる。
搭矢、ようは俺の恋人、からは朝早くからメールが届いていた。
『誕生日、おめでとう。昨日は随分話し込んでしまったけれど、寝坊なんてしてないだろうな?お土産買って帰ってくるからスネずに真っ直ぐ帰るんだぞ」
搭矢にとって精一杯の愛情表現だろうが、なんだか子供に言い聞かせてるセリフみたいで自分でなんだか情けない。
つーか、これっておめでとうって内容じゃないよな。話題全般が俺への注意って…
ケータイを眺めながら、手探りで電気をつける。
電話しようかな…
いや、でも怒られるかも…
いやいや、こんな日に怒られるなんてそんなことねぇよな…
あ、でもアイツ泊まりだから、誰かと相部屋だと…
緒方先生とかだったら絶対に誰からだとか聞かれるよなー…
緒方先生じゃなくてもアイツにこんな時間かけてくるやつの正体、知りたいよなー…
やっぱマズイかな…
そもそも寝てると思うしな…
うんうん唸りながらリビングのソファに収まる。
「さみしー……」
ケーキもごーかな食事も、アイツの温もりだってない誕生日。
あんまり感傷にひたっていたからか、それともケータイに噛り付いてたからか、
それとも…あまりにアイツが隣りにいることが当たり前になっていたからなのか、
後ろに搭矢が立っていても気がつかずに、
手を伸ばされ、抱きしめられて大袈裟すぎるほどに驚いた。
「とっ…ぅゃ…?えっっ?!なっ?なっ?!」
「おかえり」
「は?え?あ、た、ただいま……」
放心状態の俺はどもりながらも返事を返す。
「随分遅かったね」
「え、あ、う、うん。う…え?だって、だって…」
なんでここに?
いや、合鍵は渡してあるからいてもおかしくないけど、
けど、今日は搭矢イベント…
「僕がいないと思ったから?」
「そ、そりゃ!お前っ、イベントどうしたんだよ!」
「…終わってすぐに、ね」
「だっ…て、お前明日もあるだろ?!」
「うん。10時だから間に合うよ」
「そっ…んな問題…」
「そんな問題だろう?君の誕生日に君に会えるなら、当然帰ってくる」
「う……」
真顔で首を傾げてそうきっぱりと言う搭矢に俺は惚れ直している。
「お土産は時間がなかったんだけど、明日でいいだろう?今日はこれ」
搭矢が取り出したのは白く四角の、見覚えのある箱。
「もしかして……ケーキ、とか?」
「そうだよ」
それを受け取って俺はもう爆発しそうだった。
ケーキをテーブルに置いて、搭矢に飛び掛った。
「搭矢っ」
ぎゅうっと強く抱きしめると、搭矢も抱きしめ返してくれた。
「進藤」
搭矢がもぞもぞと動くので、力を緩めると、搭矢は俺の顔を見てにっこりと笑う。
かわいくて、愛しくて、見とれていると、突然搭矢が近づいて軽くキスをしてきた。
あんまり搭矢からキスしてくることなんてないから、(しかも笑顔付きで)
俺は驚いて目をぱちくり。
「はい」
すかさず搭矢は何か、紙切れを俺に差し出した。
「何?ラブレター?」
俺はそれを受け取りつつ聞いた。
搭矢は笑いながら答えた。
「違うよ。プレゼント。包んでないけど」
見ると、US○のチケット。
「え……」
「来週、ボク達そろって休みだろう?その時行かないか?」
「え、ほ、本当に??????」
搭矢はおかしそうに笑った。
「本当だよ。それとも嫌だった?」
余裕の笑みで搭矢は首を傾げる。
俺はぶんぶんと首を横に振って、搭矢を抱きしめた。
「最上級のプレゼントだ。サンキュー…搭矢」
「うん。喜んでもらえて嬉しいよ」
帰ってきた甲斐があった
そう搭矢が小さく呟いて、笑った気配を俺は感じ取った。
「搭矢がいてくれて…本当に嬉しい」
「うん。ボクも今日君に会えてよかった。もう今日には帰って来ないんじゃないかと思った」
「あ…」
俺は時計を見るために顔を上げた。
後10分で今日が終わる。
「進藤、誕生日おめでとう。君が生まれて来て、ボクと出会ってくれて、こうして隣りにいてくれてありがとう」
「…うん。うん。碁の神様に感謝だな」
「碁の神様に?」
「出会わせてくれてありがとうってな。ライバルで恋人になっていいって碁の神様が言ってくれたのかも」
搭矢はふんわりと笑って頷いた。
「うん。じゃあ碁の神様と君のご両親に感謝だね」
「だな」
「でもボクは君に一番感謝してるよ。ありがとう」
「え、俺なんて何もしてないって」
搭矢は何も言わずに微笑んでた。
それからもう一度言った。
「おめでとう」
「うん…、サンキュ。これから3ヶ月は俺が年上だなっ」
そう言うと、搭矢は苦笑に近い笑みを零し、はいはいと子供を宥めるように頷いて。
「ケーキ、食べようか?」
「おうっ」
12時過ぎ、俺の誕生日が終わっても、
俺の幸せは終わらない。




ヒカル、誕生日おめでとう〜〜〜〜〜〜〜☆☆
えー、これU○J編も書きますんで一週間後にまた続きます〜